イモ虫とメスカール

メキシコのイモ虫キャンデーをご存知の方は、テキーラにイモ虫が入っていると想像されるかもしれません。しかし、イモ虫が入っているのはテキーラではなく、メスカールなのです。

メスカールのボトルに入ったイモ虫は、現地ではグサノと呼んでいる蝶の幼虫。これを入れるメスカールの種類も限定されています。グサノには赤と白もしくはゴールドの3種類ありますが、赤の種類はアガーベの根や中心部分で育つので、珍重されています。一方、白やゴールドは葉の部分に生息。グサノはメスカールが造られるアガーベにだけ存在するので、メスカールのボトルに入っていれば、正真正銘のメスカールということになるそうです。

ちなみに、この虫は観賞用ではなく、食べるためのもの。メキシコでは、すり潰し、塩、チリパウダーをまぶし、オレンジやライムのスライスにのせて食べています。

グサノをお酒に入れる慣わしは、アステカ帝国の時代に遡り、祭司はグサノを入れることによりお酒に生命を宿したといわれています。そうした神秘的な効能を謳う向きもありますが、世俗的には、テキーラとの差別化を狙う商業的戦略であると同時に、製造技術の低さをごまかすためであったと言われています。

いずれにせよ、アガーベを切ると中からたくさんのグサノが出てくるので、これを少々メスカールに加えたところ、独特の味わいを醸し出すことがわかり、今では、塩やペッパーを加えた乾燥グサノの粉末が小袋に入って、ボトルについてくるのです。